逆輸入で薬ネット販売 of 医薬品通販禁止令と対応

医薬品通販禁止令とその対応

”逆輸入”で、1・2類医薬品ネット販売

ケンコ一コムがアジア新会社経由で

ドラッグストアレポート  2010.01より

シンガポール共和国の国旗シンガポール共和国の国旗ヘルスケア関連ネット通販最大手のケンコーコムは09年10月26日、シンガポールに新会社を設立してOTC薬のネット通販に乗り出した。

かねてから構想していた国際戦略の足がかりとの位置づけだが、海外拠点から日本国内および海外在住邦人を対象に第1・2類医薬品の個人輸入販売を行うという事業展開は、6月の薬事法改正で3類薬に限定された郵送販売上の規制強化に対応した実質的な"法の抜け穴的施策"との色合いが濃い。

改正法をめぐって同社は法省令そのものを「違憲で無効」とする訴訟を行っていることもあり、関係各方面を刺激する方向で物議を醸しそうだ。

日本人対象にOTC2400品目を販売

同社がシンガポールの現地法人を通じて立ち上げた医薬品ネット通販事業(http://sg.kenko.com/)は、滑り出しとして日本製OTC薬約2400品目を展開するもので、海外の通販サイトながら現段階での表記は価格を含めて全て日本語(円)となっており、日本および100万人を超えるとされる海外在住の邦人への販売を主としている。

内容的には旧来の同社サイトの仕組みに沿い、「風邪薬」「胃腸薬」「痛み止め」などのカテゴリー別の取扱いで、トップページでは「検査薬/妊娠検査薬」「リアップシリーズ」を目立つ大きなバナー展開を実施。

さらに"イチオシ商品"としてトランシーノ、ウィンダム、ニコチネル、ジクロテクトゲル、アクチビア軟膏といった国内で郵送販売が禁止されている1・2類薬を前面に押し出しているのが大きな特長だ。

この品揃えについて同社広報室では、「国際戦略の第一段階として海外で代替しづらくニーズが高いものを揃えた」との考え方に加え、改正法が施行された6月以降「薬をネットで買えなくなって不便に感じている人に対応したものでもある」と現状の医薬品ネット通販を補完する意図も示唆し、国内の自社サイト上でも『医薬品をお探しならケンコーコムシンガポールヘ。

日本の一般用医薬品などを個人輸入することができます』と告知している。

当然ながら、これらのネット販売行為は国内において改正法の規制対象だ。

1類薬に課せられた薬剤師による情報提供義務をはじめ、新OTC薬販売制度上のルールを無視したものになるが、同社では「事業化に際して厚労省に照会し、海外拠点で個人輸入販売を行うことについて『問題はない』との回答を得た」とコメントする。

実際に受発注や配送はあくまで同社現地法人経由で、IT環境や物流インフラの充実などの条件からシンガポールを選択し、日本国内からであっても購入者は現地に空輸・在庫された商品を個人輸入で買い求める仕組みをとっている。

よって送料は国内同社サイトでは一律490円・3990円以上の購入で無料となるのに対し、シンガポール経由では一律650円・同8000円購入以上無料と若干割高で、配送期間は在庫商品でも1週間程度を要するものの、国内でのネット購入が規制されている以上、日本からの購入ニーズに対応したサービスとして成立すると判断した。

極めて異質な事業展開に波紋必至

ケンコーコム社長ケンコーコム社長しかしながら、たとえ合法であるとしても、法の網を掻い潜るかようなビジネスモデルとの見方に立った場合、上場企業が行う事業展開としては極めて異質だ。

この点に関してケンコーコムでは、「国際戦略は起業当初から考えていたこと。いつ、どのタイミングで行うかを模索してきたが、改正法省令は戦略を早めるキッカケにはなった」と説明する一方、日本の薬事法は世界の法体系に比べて閉鎖的であると指摘。

「今後の国際戦略において大きな障壁で、このままでは当社は拡大機会を失う」と事実上、現行法に挑戦的な姿勢に基づく取り組みであることを窺わせる。

合わせてこの考え方から、シンガポール法人サイトは今のところ医薬品のみだが、今後「過度な広告規制にある」とする健康食品や化粧品の効果的な取扱いにも乗り出すほか、ノウハウの蓄積に応じて中国語など順次アジア圏の言語に幅広く対応したサイトヘと発展させ、「アジア市場ナンバーワン」を目指して健康関連ネット通販ビジネスの国際戦略を本格化する構想にある。

いずれにせよ、同社は改正省令の無効を求めた裁判を東京地裁において行っている最中にあり、その結論を待たず半ば強引に1・2類薬のネット販売に乗り出したことについては議論を巻き起こしそうだ。

シンガポールのネット通販は同社国内サイト同様独自に構築した問診チェック機能を経ないと購入できない安全対策・情報提供のシステムを導入しているが、"対面販売の原則"を大前提とする現行法上でその実効性は今のところ認められていない。

同社では今後の展開について、「色々な考え方をされるだろうが裁判は全く別の問題。

そもそも本来は日本で展開したいビジネスであり、それが困難だから海外法人展開に着手したまでで、我々の主張が認められて環境が整えば日本からアジア、世界へという本来の道筋に戻ることもある」と、引き続き行政と徹底抗戦の構えにある。

シンガポール法人サイトの実績に関しては暫く動かしてみないとわからないとしているが、他業者が追随する可能性やメーカーらの反応も踏まえ、法と国境を歪な形で超越する同社展開は様々な意味でOTC薬市場に一石を投じるものとなるのは間違いない。